失敗したときに損害を受けない人の手に判断を委ねることほど、愚かで危険な意思決定は想像しづらい。

トマス・ソーウェル

ビジネス責任者の概要

ビジネス責任者とは、特定のリリース列車によって納品される価値について、最終的な受託者、ガバナンス、効果、ROIの責任を負う、3~5人の利害関係者からなる小さなグループである。ビジネス責任者は、ソフトウェア開発、品質、配置、運用、プロダクト管理(ソリューションの内容についての権限を持つ)、およびシステムやエンタープライズのアーキテクチャーについて、管理の責任を負う。ビジネス責任者は、リリース列車の中を流れる価値のフロー全体を通して重要な役割を果たす。また、リリース計画策定時には特に重要な役割を持っていて、管理レビューや問題解決ミーティングに参加したり、余分なWIPを削除したり、計画を承認したり、PIの目標にビジネス上の価値を割り当てたりする責任を負う。ビジネス責任者は、リリース管理の主要利害関係者でもあり、本人または代理人がリリース管理に参加することもある。ビジネス責任者によっては、ポートフォリオ管理の責任を負うこともあり、通常はポートフォリオバックログから取り出すエピックについての意思決定に関与する。

詳細

役割についての要約

SAFeでは、自己管理および自己組織化するアジャイルなチームやプログラムの育成を促進しているし、担当の管理者がコードの開発やテストに直接関わることもないが、企業内で重要な権限を持つそれらの人が、組織や運用や価値の納品についての責任を破棄したわけではないことも認識している。そのため、SAFeでは、組織と組織が作成するソリューションの両方について最終責任を負う人のためにビジネス責任者という役割を定義し、彼らがSAFeのリーンでアジャイルな方法で義務を果たすための具体的な役割と作業を規定している。

このSAFeのビジネス責任者は、特定のアジャイルリリース列車によって納品される価値について最終責任を負うリーン-アジャイルなリーダーである。彼らは、列車に影響を及ぼす戦略テーマを理解する責任があり、現在のビジネスコンテキストの知識を持ち、カンバンシステムを通り抜けるエピックに影響する意思決定を行い、プログラムのビジョンロードマップの促進やレビューに参加し、リリース計画で重要な役割を果たす。また、プロダクト管理や、システムアーキテクチャーおよびエンタープライズアーキテクチャーについても最終責任を負う。

責務

リリース列車にとって、ビジネス責任者は組織上の最終権限を持つ人である。この権限を正しく行使するには、積極的かつ継続的に参加して以下の責務を果たす必要がある。

リリース計画策定前

  • SAFeの基本とリーン-アジャイルな企業におけるビジネス責任者の役割を理解する。
  • RTE、プロダクト管理、システムアーキテクトといった列車の主要な利害関係者が、ビジネス目標、プログラムビジョン、システム要件を理解して合意する必要があることを理解し、それを手助けする。
  • マイルストーンや重要な外部との依存関係など、現在のビジネスコンテキストを伝える準備をする。

リリース計画策定中

  • 与えられた時間の枠の中で、関連するビジネスコンテキストの要素を伝える。
  • ビジョンの発表、計画案のレビュー、最終的なビジネス価値の設定、最終計画のレビューなど、特定の主要イベントに参加できるようにする。
  • 計画案のレビューで主要な役割を果たす。そこでは、さらに大きなビッグピクチャーを念頭に置いて、その中の計画が全体として現在のビジネス目標を達成できるかどうかを考慮する。重要な外部の関与や依存関係に注意する。
  • 計画中には積極的に歩き回り、チームにビジネスの優先順位を伝える。
  • 1日目終了時の管理者レビューと問題解決ミーティングに参加する。範囲を見直して調整し、必要であれば妥協案を作成し、列車の主要目標について利害関係者間で合意と整合を取って維持する作業に積極的に関与する。
  • チームに関わり、対話し、チームのPI目標のビジネス価値を設定する(2日目)。
    (注: これは、チームとプログラムとビジネスの整合を取る上で非常に重要な作業である。下記を参照のこと。)
  • 最終計画のレビューに積極的に参加し、すべての最終計画を承認する。

PI実施中

  • 本人または権限を委任した代理人がリリース管理に参加する。そこでは、範囲の管理、品質、配置オプション、リリースおよび市場を考慮する。
  • 優先順位が変化し、必然的に範囲が変わっても、ビジネスと開発の整合を維持するという合意に、引き続き積極的に関与する。
  • システムのデモに毎回出席し、進捗を確認してフィードバックを返す。
  • 必要に応じて、適切な場合にのみ、アジャイルチームスプリント計画およびチーム振り返りに出席する。
  • RTE、プロダクト管理、リリース管理、その他の主要利害関係者からの妨害に積極的に対処する。
  • リーン-アジャイルなリーダーの知識と振る舞いを常に示す。

検査/適応時

  • チームとミーティングを行って、計画したビジネス価値に対して実際に達成したビジネス価値を自己評価するのを手助けする。(ARTメトリックスのリリース予測性測定を参照のこと。)
  • 検査と適応のワークショップに自分で参加するか、権限を委任した代理人を参加させて、列車のベロシティーや品質や効率を妨害する要因を排除する。

PI目標のビジネス価値の設定

連携を取るため、またチームが相対的なビジネス効果を理解できるよう、ビジネス責任者は計画策定時に、チームの目標それぞれについてビジネス価値を1~10の段階で評価する。その例を図1に示す。

図1. チームのPI目標のビジネス価値の評価

これは、チームと最重要な利害関係者とが顔を合わせて行う重要な会話である。相互に関わり合うための直接の関係を構築し、ビジネス目標とその相対的な価値をよりよく理解する機会となる。また、「チーム」の境界を広げて主な利害関係者を取り込むチャンスでもある。この評価時には、通常、ビジネス責任者によって、ユーザーが直接使用する機能(図の例ではFirst pricing programs(料金プログラム第1版))にもっとも高い評価が付けられる。これは当然のことで、「販売できる」からである。しかし、アーキテクチャーなどの項目(図の例ではGateway repointing Architecture(ゲートウェイポイント再設定アーキテクチャー))によって、今後のビジネス価値を生み出すチームのベロシティーが向上するため、これらの項目のビジネス価値を高く評価すると、最終的なベロシティーが向上し、さらにチームの合理的かつ技術的な挑戦を支持していると示すこともできる。成熟したビジネス責任者であれば、それを理解している。

さらに、PI計画後の道のりはどうしても曲がりくねったものになるため、目標ごとにビジネス価値の評価が決まっていると、チームがトレードオフを検討したり、可能な範囲で最大のビジネス上の利点を納品できるよう範囲を少し調整する際に、指針として役立つ。また、これらの数値は最終的に、リリース予測性メトリックス(プログラムのパフォーマンスや信頼性を示す重要な指標)を判断するためにも使用できる。


 

Last update 21 July, 2014

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