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カンバンは牛乳屋さんのようなものである。お母さんは牛乳屋さんにスケジュールを知らせない。お母さんはMRP(資材所要量計画)を利用しない。お母さんは単に空っぽの牛乳瓶を玄関前の階段に置き、牛乳屋さんはそれを補充する。これがプルシステムの本質だ。

- アーニー・スミス、リーンイベントのファシリテータ

ビジネスエピックカンバンの概要

SAFeでは、ビジネスとアーキテクチャーのポートフォリオエピック用に、カンバンシステムを開発して実装することを推奨している。この2種類のカンバンシステムは非常によく似たやり方で運用されるが(実際に1つのシステムで実装することができる)、通常は異なるチームの管理下にあるため、独立したシステムとしてそれぞれを説明する。このページではビジネスエピックのためのカンバンシステムの実装と利用についてまとめる。アーキテクチャーエピックポートフォリオカンバンシステムは別のページで説明する。

効果的なビジネスエピックカンバンシステムの実装は、通常、プログラムポートフォリオ管理チームの管理下で行う。これを実装するには、リーンとアジャイル開発、そしてすべてのリリース列車の生産能力(新規開発のために利用できるベロシティー)に関する基本な理解が必要である。しかし、カンバンのメカニズム自体はとても簡単なので、まずは単に企業の既存プロセスに載せ、その後自然に発展進化させることができる。

詳細

ビジネスエピックのカンバンシステムの動機づけ

以下の理由でカンバンシステムを利用する。

  • 戦略的なビジネス取り組みのバックログ(今後のビジネスエピック)を見える化する。
  • これらの取り組みを実装に移すための分析や意思決定を構造化し、そのプロセスが全員に見えるようにする。
  • WIP(仕掛かり作業)制限を設定する。これによって、チームが責任を持って分析すること、処理能力や現実をはるかに超えた実装や時間枠を期待しないことを保証する。
  • ビジネス、 アーキテクチャーチーム開発チームの主要利害関係者間の協調体制を作り上げることを支援する。
  • もっとも重要なビジネス決定に関して、経済的な意思決定ができるよう定量的な透明性のある根拠を提供する。

ビジネスエピック用のカンバンシステムのプロトタイプ

このカンバンシステムを図に表すと図1のようになる。

Figure 1.

図1. ビジネスエピックカンバン

このポートフォリオカンバンシステムでは、1つのエピックがシステムを通って実装(または拒否)へ進むときの5つの状態が述べられている。

  1. じょうご – 取り込むための状態。どのような新しいビジネスアイディアも歓迎される。
  2. レビュー – 機会、労力と遅延コストの初期の見積もりが確立される。
  3. 分析 – 実行可能性、測定可能なメリット、開発と配置の影響、潜在的なリソースの提供可能性を確立するため、より徹底した作業が行われる。エピックの承認を得るために、軽量ビジネス企画を作成する。
  4. ポートフォリオバックログ – ポートフォリオカンバンを通過し「ゴー」の承認が得られたエピックは、ここで実装チームからの「プル」を待つ。
  5. 実装 – 影響を受けるアジャイルリリース列車、あるいは実装に必要なリソースとスキルを提供できるアジャイルリリース列車にエピックが割り当てられる。ポートフォリオメトリックスのページで説明したレポートを用いて、エピックを継続的に追跡する。

システムの説明

1. じょうご – 問題/ソリューションニーズの特定

じょうご待ち行列は「取り込む」ための待ち行列である。この待ち行列では、どのような新しい「大ビジネスアイディア」も歓迎される。誰が提出しても構わない。但し、通常、これらの大きな取り組みは次のようなものから発生する。

  • ポートフォリオビジョン。取り組みのほとんどは、企業の戦略テーマポートフォリオビジョンと計画策定プロセスによって進められる。
  • 市場の予期しない変化、会社の買収、合併、新しい競合の参入など。
  • コスト削減や業務効率に関するニーズ。s
  • ビジネスのパフォーマンスを妨げるような既存ソリューションの問題。

この待ち行列では、エピックのビジネス企画や見積もりは必要ない。「すべての自動車ローンに関するセルフサービス」のような短いキーワードや短文で、エピックを任意の形式で記述できる。ツールは重要ではない。ドキュメントやスプレッドシート、あるいは壁に貼った目に見えるカンバンシステムで通常は十分である。この待ち行列内の項目の作業に対する投資はわずかなので、この待ち行列にはWIP制限がかからない。すべてのアイディアを取り込んで検討する。じょうごのエピックはプログラムポートフォリオ管理チームが決めた定期的なタイミングで議論される。判断基準を満たしたエピックは、レビューの待ち行列に進む。

2. レビュー

レビュー待ち行列に進んだエピックは、さらに時間を投資して検討されることになる。この待ち行列では、エピックの大ざっぱな規模が割り出され、ある程度の価値の見積もりが行われる。時間の投資は、議論レベルと、必要であればごく予備的な調査に限られる。エピック価値の短文記述テンプレートを用いて、エピックを詳細化する。投資額が増えるため、この待ち行列にはWIP制限がかけられ、検討中の項目の数が限定される。レビューエピックは定期的に議論される。ビジネス上の利点がどこにあるかが識別され、各エピックには遅延のコスト(COD)が割り当てられる。待ち行列の一番上に上がってきたエピックは、空きができ次第、分析にプルされる。

3. 分析

この待ち行列に到達したエピックはより厳密な分析を行う価値があるため、さらなる投資が必要になる。通常はエピックオーナーとして1人のビジネス分析者を割り当てる。影響を受ける可能性のあるアジャイルリリース列車のエンタープライズアーキテクトシステムアーキテクト、開発チーム、プロダクト管理、主要利害関係者との積極的な協調作業が始まる。ソリューション、設計と実装の代替案を調査する。社内開発するか、アウトソーシングするかを検討する。軽量のビジネス企画を開発して「ゴー」か「ストップ」かの提言をする。

この待ち行列の項目には希少な要員をつぎ込むことになるし、さらに重要なことに、今後多大な投資が必要になるため、ビジネス分析者、開発チーム、エンタープライズアーキテクトの処理能力や、この待ち行列内の項目をどれだけの速度で処理したいかに応じて、WIP制限が決められる。分析から実装へ進めるかどうかは企業にとって重要な経済的意思決定なので、作成されたビジネス企画に基づいて適切な権限を持った人が判断しなければならない。「ゴー」の基準を満たしたエピックは、実装に進む。

4. ポートフォリオバックログ

この待ち行列に到達したエピックは、適切な権限を持つ人から「ゴー」の判断を得ている。通常は、プログラムポートフォリオ管理、あるいは同様の団体や組織がこの判断を行う。これらのエピックは定期的なリズムでレビューされる。この待ち行列は次の実装作業向けの低コストの保持パターンを表す。1つ以上のアジャイルリリース列車に十分な処理能力がある場合、この待ち行列のエピックが実装待ち行列へ進める。

5. 実装

この待ち行列では、エピックに関する主な責任が列車に移る。ビジネス分析要員は「プル」ベースで残る。つまり、実装の責任は開発チームにあるが、分析者は開発チームを支援し、必要な作業についてチームが十分に理解するまで責任を共有する。

この待ち行列には厳しいWIP制限がある。この制限は主に、開発チームの処理能力と、必要なソリューションへの投資額によって決まる。


さらに知りたい場合

このシステムに関するより詳細な説明は以下の書籍を参照してください。

[1] Leffingwell, Dean. Agile Software Requirements: Lean Requirements Practices for Teams, Programs, and the Enterprise. Addison-Wesley, 2011.(邦訳:アジャイルソフトウェア要求:チーム、プログラム、企業のためのリーンな要求プラクティス、翔泳社、2014)

カンバンシステムに関する包括的な説明は以下の書籍を参照してください。

[2] Anderson, David. KANBAN. Blue Hole Press, 2010.(邦訳:カンバン ソフトウェア開発の変革、リックテレコム、2014)

Last update: 25 July, 2014

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